構造と作動

概 要

システムの特徴

  1. SRSエアバッグ
    1. 車両前面から搭乗者に重大な危害が及ぶような強い衝撃力を受けた場合,シートベルトの身体拘束の働きと合わせ,瞬時にクッションとなるバッグを膨らませ,搭乗者の頭や胸部への傷害を軽減します。

  2. プリテンショナー機構
    1. 車両前方から強い衝撃力を受けた場合,シートベルトを瞬時に引き込むことで,搭乗者の拘束効果を高めます。

  3. フォースリミッター機構
    1. シートベルトに規定値以上の荷重がかかると,その規定値を維持させ胸部にかかる衝撃を軽減させます。

  4. SRSサイドエアバッグ & SRSカーテンシールドエアバッグ
    1. 車両側面から搭乗者に重大な危害が及ぶような強い衝撃力を受けた場合,瞬時にクッションとなるバッグを搭乗者側面および搭乗者頭部に膨らませ,搭乗者への重大な傷害を軽減します。
    2. エアバッグ作動図

システム機能

システム作動

  1. SRSエアバッグ & プリテンショナー付きシートベルト
    1. SRSエアバッグ & プリテンショナー付きシートベルトは,前面衝突時に一定以上の衝撃を感知した場合に作動します。
    2. SRSエアバッグの作動は,衝突時に変形・移動しない壁に衝突速度が約25km/h以上で前方約30゜の範囲で衝突した場合を想定しています。
    3. なお,フロントエアバッグセンサーとエアバッグセンサーASSY内のGセンサーは衝突時の減速度を検出しているため,車両下部からの強い衝撃を受けるような状況で作動する場合があります。(縁石などにぶつかった時,深い穴や溝に落ちたり乗り越えた時,ジャンプして地面にぶつかったり,道路から落下した時など。)
      1. エアバッグシステム非作動ケース
        1. フロントエアバッグセンサーとセンターエアバッグセンサーASSY内のGセンサーは,車両の前方向から働く衝突時の減速度を感知しているため,状況によってはエアバッグシステムが作動しない場合があります。また,前面衝突時でも減速度がセンサーの規定値に到達しない場合,システムは作動しません。

  2. SRSサイドエアバッグ & カーテンシールドエアバッグ
    1. SRSサイドエアバッグは,客室部ボデーが車両側面から強い衝撃を受け,サイドエアバッグセンサーが一定以上の衝撃を感知した場合に作動します。
      1. SRSサイドエアバッグ & カーテンシールドエアバッグ非作動ケース
        1. 側面衝突時でも衝突の状況によっては車両本体およびドアの変形により衝突時のエネルギーが緩和され,センサーの点火判定基準にまで到達せず,SRSサイドエアバッグ & カーテンシールドエアバッグが作動しない場合があります。

廃棄処理機能

  1. 一括作動処理コネクター
    1. センターエアバッグセンサーASSYに一括作動処理用コネクターを設定しました。専用ツールをこのコネクター部に追加することにより,エアバッグシステムの一括作動処理を可能としました。

  2. 一括作動処理回路
  3. 一括作動処理表示ラベル(センターエアバッグセンサーASSYインフォメーションラベル)
    1. 助手席ドアロックストライカー上部に,センターエアバッグセンサーASSY取り付け位置を表示するインフォメーションラベルを貼付しました。この車両の場合,センターエアバッグセンサーASSYがセンターコンソール前部のフロアトンネル上に取り付けられていることを表示しています。

エアバッグシステムの注意事項

  1. 注意事項
    1. エアバッグシステムは,正しい乗車姿勢でシートベルトを正しく着用していた場合に効果を発揮します。展開部付近に物を置いたりアクセサリーなどを取り付けないでください。作動時にケガをする恐れがあります。また,エアバッグ展開部に傷あるいは損傷がある場合,そのままご使用にならず販売店にご相談ください。詳しいSRSエアバッグの内容については,取り扱い説明書を参照してください。運転席および助手席のサンバイザーにユーザー用のコーションプレートを貼付しました。

SRSエアバッグ & プリテンショナー付きシートベルト

構造と作動

  1. 運転席SRSエアバッグASSY
    1. 運転席SRSエアバッグASSYをステアリングホイールパッドに内蔵しました。
    2. SRSエアバッグASSYは非分解式となっており,インフレーター,バッグおよびステアリングホイールパッドなどで構成されています。センターエアバッグセンサーASSYからの点火信号により,インフレーター内の点火装置が着火し,インフレーター内でガスを発生させます。バッグはこの時,瞬時に展開・収縮します。小型,軽量化を実現し,さらにホイールパッドの展開部構造の最適化により,効率良いエアバッグ作動を実現しました。
      1. コーションプレート
        1. ステアリングホイールパッドASSY裏面のインフレーター部にサービス用のコーションプレートを貼付しました。

  2. 助手席SRSエアバッグASSY
    1. 助手席側インストルメントパネル上に助手席SRSエアバッグを取り付けました。SRSエアバッグASSYは,インストルメントパネルとリインホースメントブラケットに固定され,ケースおよびバッグにより構成されています。また,エアバッグドアはインストルメントパネルと一体としました。
      1. 助手席SRSエアバッグASSYコーションプレート
        1. 助手席SRSエアバッグASSYのケース底部にサービス用のコーションプレートを貼付しました。

  3. プリテンショナー + フォースリミッター付きシートベルト
    1. 運転席,助手席シートベルト巻き取り部にプリテンショナー + フォースリミッター機構を設定しました。シートベルトASSYは,ベルト巻き取り機構,ELRロック機構,プリテンショナー機構,フォースリミッター機構およびテンションリデューサ機構などにより構成されています。
      1. 構造と作動
        1. プリテンショナー
          1. プリテンショナー機構部は,ガスジェネレーター,パイプ,ボール,リングギヤとピニオンから構成されています。
        2. フォースリミッター
          1. フォースリミッター機構部は,トーションバー・スプールなどにより構成されています。プリテンショナーの作動が完了し,シートベルトが乗員の移動により引き出されるとELR部がロックし,フォースリミッターが作動を始めます。ベルトが規定加速度以上で引き出されるか,車両に規定値以上の加速度が加わるとELR機構が作動し,ベルトが引き出せなくなります。ELRロック状態で規定荷重を超えた張力がベルトに加わると,トーションバーが捻られ,トーションバーと一体のスプールが回転してベルトが引き出され,ベルト張力が一定に保たれます。
      2. シートベルトコーションプレート
        1. シートベルトの表面にサービス用のコーションプレートを貼付しました。

  4. フロントエアバッグセンサー
    1. フロントメンバー上に、フロントエアバッグセンサーを取り付けました。フロントエアバッグセンサーは、前方からの衝撃を関知して減速度信号をセンターエアバッグセンサーASSYに送ります。

SRSサイドエアバッグ & SRSカーテンシールドエアバッグ

構造と作動

  1. SRSサイドエアバッグASSY
    1. SRSサイドエアバッグASSYを運転席と助手席のシートバックに配置しました。
    2. SRSサイドエアバッグASSYは非分解式となっており,インフレーター,バッグおよびカバーなどで構成されています。
      1. コーションプレート
        1. SRSサイドエアバッグASSYのカバーにサービス用のコーションプレートを貼付しました。

  2. SRSカーテンシールドエアバッグASSY
    1. SRSカーテンシールドエアバッグASSYを運転席と助手席のフロントピラーからルーフサイドにかけて配置しました。
    2. SRSカーテンシールドエアバッグASSYは非分解式となっており,インフレーターおよびナイロン製のバッグなどで構成されています。
      1. SRSカーテンシールドエアバッグ作動
        1. SRSカーテンシールドエアバッグは,瞬時にクッションとなるバッグを膨らまし,頭部への衝撃を緩和します。なお,作動は一度限りとなっており,さらなる衝撃を受けたとしても再作動しません。以下にSRSカーテンシールドエアバッグの作動プロセス例を説明します。(1)車両側面から衝撃(2)エアバッグ作動開始・・・エアバッグセンサーが設定値以上の衝撃を感知し,エアバッグの作動を開始します。(3)エアバッグ作動・・・・・主に搭乗者の頭部がドアガラスなどの車内物,またはポールなどの車外物に衝突する前にエア              バッグは展開します。(4)エアバッグ作動終了・・・搭乗者への衝撃を緩和吸収し,作動を終了します。
      2. コーションプレート
        1. SRSカーテンシールドエアバッグASSYのケース部にサービス用のコーションプレートを貼付しました。

  3. サイドエアバッグセンサーASSY
    1. サイドエアバッグセンサーASSYをセンターピラー下部およびリヤーピラー下部に取り付けました。センターピラー下部のサイドエアバッグセンサーASSYは,セーフィングセンサーと半導体式Gセンサー,点火判定回路,通信回路などで構成されており,側方からの衝撃を感知して点火信号をセンターエアバッグセンサーASSYに送り,SRSサイドエアバッグおよびカーテンシールドエアバッグの作動判定を行います。リヤピラー下部のサイドエアバッグセンサーASSYは,セーフィングセンサー,半導体式Gセンサー,点火判定回路,通信回路などで構成されており,側方からの衝撃を感知して点火信号をセンターエアバッグセンサーASSYに送り,SRSカーテンシールドエアバッグの作動判定を行います。
      1. コーションラベル
        1. サイドエアバッグセンサーASSYの側面にサービス用のコーションラベルを貼付しました。

センターエアバッグセンサーASSY(エアバッグコンピューター)

構造と作動

  1. 作動判定
    1. SRSエアバッグ & プリテンショナー + フォースリミッター付きシートベルトは、前突時の衝撃により点火します。判断は,フロントサテライトセンサー信号とセンターエアバッグセンサーASSY内のGセンサーおよびセーフィングセンサー信号を基に行っています。SRSサイドエアバッグは,側突時の衝撃によりサイドエアバッグセンサー内の電子センサーとセーフィングセンサーの両方がONした場合に点火します。SRSカーテンシールドエアバッグは,上記の条件を満たした前席の点火信号または後席の点火信号のどちらかがONした場合に点火します。センターエアバッグセンサーASSYは作動した実績を残すため,プライマリーチェック後もエアバッグウォーニングランプを点灯させます。このウォーニングは消去できません。

  2. 診断回路の作動
    1. メーター内のウォーニングランプにより,診断回路の作動表示を行っています。診断回路はプライマリーチェック,常時チェックの2つの期間に分けて作動します。
      1. プライマリーチェック
        1. イグニッションスイッチをONにすると,約6秒間エアバッグウォーニングランプを点灯させて,プライマリーチェックを行います。なお,この期間は点火禁止状態としてセンターエアバッグセンサーASSYの作動診断を行います。このプライマリーチェックにて異常が検出されると,6秒を経過してもエアバッグウォーニングランプは消灯されずに点灯したまま,または点滅となります。また,展開作動したセンターエアバッグセンサーASSYは,故障の有無に関わらず,プライマリーチェック後もウォーニングランプが点灯のままになります。
      2. 常時チェック
        1. プライマリーチェック終了後,エアバッグウォーニングランプが消灯すると点火可能状態となり,診断回路はシステムに異常がないかを常時チェックします。もし,この常時チェック中に故障が検出されると,エアバッグウォーニングランプを点灯または点滅します。(なお,電源電圧低下のウォーニング表示は電源電圧が正常に復帰した後に消灯します。)

  3. ダイアグノーシス機能
    1. ダイアグノーシスモードに切り替えることにより,インジケーターランプの点滅回数から異常箇所の診断結果を表示することができます。また,新ダイアグノーシス機能を採用し,DLC3に診断ツールを接続することで故障箇所の診断コードを読みとることができます。なお,ダイアグノーシスモードの詳細は修理書を参照して下さい。

  4. センターエアバッグASSYコーションプレート
    1. センターエアバッグセンサーASSY上部にサービス用のコーションプレートを貼付しました。