パワーウインドゥシステム 構造と作動

パワーウインドゥシステム

パワーウインドゥシステム構成

  1. 構成部品
    1. パワーウインドゥスイッチノブには,インジケーターランプ(LED)を内蔵しています。

パワーウインドゥシステム機能

  1. ドアガラス位置初期化の必要性について
    1. このシステムはドアガラス位置をモーターの回転からパルスセンサーが電気的に読み取っており,この情報を基に各種機能の制御を行っています。
    2. 点検や整備などでバッテリーを接続し直したり(+B電源初回投入時)各パワーウインドゥスイッチのコネクター脱着を行った場合,システムが記憶している現在のドアガラス位置情報が失われるため,初期化(イニシャライズ)操作を行ってドアガラス位置をシステムに“学習”させる必要があります。
    3. 現在のドアガラス位置をシステムが“学習”できていない場合は,挟み込み防止機構など一部の機能が働かないので注意してください。
    4. システムがドアガラス位置を“学習”できていない場合の注意事項
      • 挟み込み防止機構が働きません。
      • ワンタッチ式オート作動が働きません。
      • MPXマスタースイッチから各ドアガラスのリモートコントロール操作を行うことができません。
      1. 初期化(イニシャライズ)操作
        1. 初期化操作は,ドアガラス開口量が約1/4以上としてから行う必要があります。
        2. 初期化操作は,各ドアガラスごとにそれぞれ行う必要があります。(リモートコントロール操作による初期化はできません)
        3. イグニッションスイッチ ON,各席ドアスイッチをオートアップ保持します。ドアガラスが閉じきった後も約1秒間スイッチをオートアップ保持し続けると,システムはドアガラスが全閉した状態を基準位置(原点0)として記憶します。
        4. □ 参 考 □
          * : ドアガラスの基準位置(原点0)は,全閉時を検出するごとに更新を行います。

        5. 初期化操作後には,必ずパワーウインドゥシステムの機能点検を行ってください。なお,初期化操作および機能点検の詳細については,修理書を参照してください。

  2. ワンタッチ式オートアップ & ダウン機能
    1. イグニッションスイッチ ONで,全席のパワーウインドゥスイッチをアップ側(引く)またはダウン側(押す)に2段操作すると,該当するドアガラスが自動的に,全閉または全開位置までオートアップまたはオートダウン作動を行います。
    2. MPXマスタースイッチの各席ドア用スイッチを同様に操作することで,運転席から各席ドアガラスのオート作動をリモートコントロールすることができます。
    3. いずれのオート作動も,該当するスイッチを作動方向と反対側に1段操作すると,オート作動を中断することができます。

  3. 挟み込み防止機構
    1. マニュアルアップまたはオートアップ作動中にドアガラスが異物を挟み込んだ場合,ドアガラスは自動的に約50mm(または約1秒間)ダウン作動を行います。この場合,ドアガラス開き量が約200mmに達していない場合は,開き量が約200mmになるまで(または約5秒間)ダウン作動を行います。
      1. 挟み込み防止機構キャンセル操作
        1. 万一,挟み込み防止機構の誤作動によりドアガラスが閉じきれない場合など,該当するドアスイッチのオートアップ操作を約10秒以上保持することにより,挟み込み防止機構の作動をキャンセルすることができます。

  4. ウインドゥロック機能
    1. MPXマスタースイッチのウインドゥロックスイッチをON(押し込んだ状態)することにより,従来と同様,運転席以外の各席パワーウインドゥ作動を禁止することができます。なお,ウインドゥロック操作時には運転席ドアスイッチを除き,すべてのパワーウインドゥスイッチノブ内蔵のインジケーターランプ(LED)が消灯します。

  5. フェイルモードLED点滅機能
    1. ドアガラスの位置・速度・方向を検出しているホールICに異常が発生した場合や,ホールICの検出した位置情報とパワーウインドゥスイッチの記憶している位置情報に規定量以上の誤差が発生した場合には,自己診断によるフェイルモードへ移行しスイッチノブ内蔵のインジケーターランプ(LED)による点滅表示を行います。

パワーウインドゥモーターASSY

  1. 構造
    1. パワーウインドゥモーターASSYは,パワーウインドゥモーター本体・コネクター部・ギヤ部で構成されています。
    2. コネクター部には挟み込み防止機構用としてパルスセンサーが一体化されており,パワーウインドゥモーターの回転を検出しています。
      1. パルスセンサー(ホールIC)
        1. 2個のホールICは,パワーウインドゥモーターのウォームギヤに設けられた磁石により,モーターの回転に同期したパルス信号を自席パワーウインドゥスイッチ内のCPUへ出力しています。
        2. パワーウインドゥスイッチはホールIC1が出力するモーター回転軸1回転あたり1周期のパルスをカウントすることで,ドアガラスの移動量を検知しています。これと合わせて,ホールIC2が出力するモーターの回転方向によって異なるパルスのHI/LO周期を検出することでドアガラスの移動方向を検知し,これらを記憶することにより現在のドアガラスの位置を認識しています。パワーウインドゥスイッチは,これら2個のホールICから得られる位置情報を基に各種機能の制御を行います。
        3. □ 参 考 □
          * : ドアガラスの位置情報は+B電源によりバックアップされているため,パワーウインドゥスイッチへの+B電源供給が遮断されると,初期化操作を行う必要があります。

        4. 同時にパワーウインドゥスイッチはホールIC1が出力するパルスの間隔からモーターの回転速度の変化を検出することで,ドアガラスの移動速度の変化を検知しています。これにより,ドアガラスにかかる荷重を認識し,挟み込み防止機構および過負荷停止機能の制御を行います。

パワーウインドゥシステム制御

  1. 作動
    1. マニュアルアップ〈ダウン〉作動
      1. 各ドアスイッチによる作動
        1. イグニッションスイッチ ONで,MPXマスタースイッチの運転席ドアスイッチまたはMPX各席ドアスイッチをアップ〈ダウン〉側に1段操作すると,内蔵のCPUがマニュアルアップ側〈ダウン側〉 ONを入力し,アップリレー〈ダウンリレー〉をONします。
        2. このときダウンリレー〈アップリレー〉はアース回路を形成しており,電流は,BDR端子→アップリレー〈ダウンリレー〉→MUP端子〈MDN端子〉→各席パワーウインドゥモーター→MDN端子〈MUP端子〉→ダウンリレー〈アップリレー〉→アースと流れ,各席パワーウインドゥモーターがそれぞれアップ〈ダウン〉側に回転します。
        3. スイッチがOFFするとその時点で,CPUはアップリレー〈ダウンリレー〉をOFFし,パワーウインドゥモーターを停止します。
      2. MPXマスタースイッチによるリモートコントロール作動
        1. イグニッションスイッチ ONで,MPXマスタースイッチの各席用スイッチをアップ〈ダウン〉側に1段操作すると,内蔵のCPUが各席用スイッチのUPスイッチ〈DOWNスイッチ〉 ONを入力し,単方向多重通信により該当するスイッチの「リモートコントロールアップ〈ダウン〉」信号をMPX各席ドアスイッチへ送信します。
        2. MPX各席ドアスイッチで該当するドアスイッチが「リモートコントロールアップ〈ダウン〉」信号を受信すると,各ドアスイッチによるマニュアル作動と同様に自席のパワーウインドゥモーターをアップ〈ダウン〉側に回転させます。
        3. MPXマスタースイッチの各席用スイッチがOFFするとその時点で,CPUは「リモートコントロールアップ〈ダウン〉」信号の送信を停止し,該当するドアスイッチも作動を停止します。
    2. オートアップ〈ダウン〉作動
      1. 各ドアスイッチによる作動
        1. イグニッションスイッチ ONで,MPXマスタースイッチの運転席ドアスイッチまたはMPX各席ドアスイッチをアップ〈ダウン〉側に2段操作すると,内蔵のCPUはマニュアルアップ側〈ダウン側〉 ONを入力するとともに,オートスイッチ ONも入力します。マニュアルアップ〈ダウン〉作動と同様に各席パワーウインドゥモーターを回転させます。
        2. このとき内蔵のCPUは,パワーウインドゥモーター内蔵のホールICからのパルス信号をカウントしており,スイッチ OFFを検知しても,モーターの回転数からドアガラスが全閉〈全開〉位置に達したことを検知するまで,アップリレー〈ダウンリレー〉をONし続けます。
      2. MPXマスタースイッチによるリモートコントロール作動
        1. イグニッションスイッチ ONで,MPXマスタースイッチの各席用スイッチをアップ〈ダウン〉側に2段操作すると,内蔵のCPUが各席用スイッチのマニュアルアップ側〈ダウン側〉 ONおよびオートスイッチ ONを入力し,単方向多重通信により該当するスイッチの「リモートコントロールオートアップ〈オートダウン〉」信号をMPX各席ドアスイッチへ送信します。
        2. MPX各席ドアスイッチで該当するドアスイッチが「リモートコントロールオートアップ〈オートダウン〉」信号を受信すると,各ドアスイッチによるオート作動と同様に自席のパワーウインドゥモーターを全閉〈全開〉位置までアップ〈ダウン〉側に回転させます。
      3. オート作動の停止
        1. 下記条件のいずれかが成立した場合,オート作動を停止します。
        2. オート作動停止条件
          • オート作動制御中であるスイッチが,ドアガラスの全閉〈全開〉を検知。
          • オート作動制御中であるスイッチが,反対方向の操作スイッチ ONを入力。
          • オート作動開始から約10秒経過。
          • オート作動制御中であるMPX各席ドアスイッチが,単方向多重通信で反対方向の「リモートコントロール」信号または「ウインドゥロック」信号を受信。
    3. 挟み込み防止機構
      1. 作動条件
        1. 挟み込み防止機構は,各席ドアのパワーウインドゥスイッチが該当するドアガラスをそれぞれ制御しており,下記の条件がすべて成立した場合に作動します。なお誤作動を防止するために,ドアガラス位置が規定区間内にあるときは挟み込み防止作動を行いません。
        2. 挟み込み防止作動条件
          • マニュアルアップ作動中・オートアップ作動中・キーOFF後作動中(マニュアルアップ・オートアップ)。
          • パワーウインドゥスイッチがドアガラスの全閉した位置を基準点(原点0)として“学習”している状態。
          • パワーウインドゥモーターのロック・回転数の変化・パルスの乱れ・電圧降下が発生した場合。
          • ドアガラス位置が全閉位置直前または全開位置からアップ作動開始直後(規定区間)以外。
      2. 挟み込み検出後の反転条件および降下量
        1. 挟み込み防止機構が作動し,約50mmまたは1秒経過するまでダウンしてもドアガラスが開いている量(すき間)が約200mmに達していない場合は,約200mmまたは5秒経過するまで反転作動を継続します。ただし,ダウン作動が約50mmに到達する以前にドアガラスが全開位置となった場合は,その時点で作動を終了します。
        2. 反転作動中はマニュアルアップ・オートアップの入力を禁止します。ただし,マニュアルアップは,反転作動終了後にいったんスイッチがOFFされた後,入力を受け付けます。また,マニュアルダウン・オートダウンはスイッチの入力を受け付けますが,ダウン作動は反転作動終了後に行われます。
      3. 挟み込み反転作動
        1. 挟み込み防止作動条件を満たすと,パワーウインドゥスイッチは挟み込みと判定してアップリレーに流れていた電流を遮断し,同時にダウンリレーをONします。これにより,電流はダウン側に流れパワーウインドゥモーターを反転作動させます。
    4. キーOFF後作動
      1. イグニッションスイッチ ON→OFFすると,MPXマスタースイッチ内のIC1・IC2がこれを検知し約45秒間のキーOFF後作動のカウントを開始するとともに,単方向多重通信により「キーOFF後作動許可」信号をMPX各席ドアスイッチへ送信し続けます。これにより,全席でのパワーウインドゥ作動を許可します。
      2. 約45秒が経過,またはMPXマスタースイッチ内のIC1に運転席ドアカーテシランプスイッチ 0N→OFFが入力されると,「キーOFF後作動許可」信号の送信を停止します。ただし,オート作動中または挟み込み防止制御中に「キーOFF後作動許可」信号の送信が停止した場合は各作動の完了まで行い,オート作動においても挟み込み防止制御を行います。
    5. ウインドゥロック作動
      1. イグニッションスイッチ ONまたはキーOFF後作動時にウインドゥロックスイッチをONすると,MPXマスタースイッチのWLSW端子からMPX各席ドアスイッチのPCT端子への電流供給が遮断されます。また,MPXマスタースイッチ内のCPUはウインドゥロックスイッチ ONを検知すると,単方向多重通信により「ウインドゥロック」信号をMPX各席ドアスイッチへ送信します。
      2. MPX各席ドアスイッチは,PCT電流遮断を検知または「ウインドゥロック」信号を受信している間は,自席ドアガラスのパワーウインドゥ制御を停止します。
    6. ドアガラス位置情報の検出に関するフェイルセーフ(自己診断によりフェイルモードへ移行)
      1. ドアガラスの位置・速度・方向を検出するホールICに異常を検出した場合や,パワーウインドゥスイッチがドアガラスの全閉位置として“学習”した位置と実際のドアガラス位置に規定量以上の誤差が発生していた場合,自己診断によりフェイルモードへ移行します。
      2. 自己診断によりフェイルモードに移行したときは,ドアガラスの位置情報が“学習”できていない状態と同様の制御とし,スイッチ操作後の約45秒間またはイグニッションスイッチをOFFするまでの間,パワーウインドゥスイッチノブ内蔵のインジケーターランプ(LED)を点滅させます。
      3. ドアガラス位置情報の検出に関するフェイルセーフ一覧
        項 目
        状 態
        パルスセンサー(ホールIC)故障
        • 閉/開作動中にドアガラスの位置・速度・方向を検出する2個のホールICで一方のみのパルス検出が規定量以上続いた場合。
        パルス方向異常
        • 閉/開作動中にパワーウインドゥモーターの駆動方向と逆方向のパルスを連続して規定量以上検出した場合。
        両パルス停止異常
        • 閉/開作動中の規定時間以上または,全閉(または付近)状態からの開作動中の1秒間に2個のホールICからパルス検出が行われない場合。
        ドアガラス位置情報異常
        • 閉作動中,MPXマスタースイッチおよびMPX各席ドアスイッチが記憶している全閉位置(原点0)と実際のドアガラス位置との間に規定量以上の誤差が発生した場合。
    7. パワーウインドゥモーターの駆動制御に関するフェイルセーフ
      1. オート作動時にモーターが規定時間を超えて駆動し続けることを防止し,モーターおよび回路を保護します。また,ドアガラスの位置情報に誤りがあり,全閉位置で挟み込み防止機構が働きドアガラスを全閉できない場合は位置情報を“学習”できていない状態にし,ドアガラスの全閉を行えるものとしました。
        1. 連続作動制限機構
          1. 各パワーウインドゥスイッチによるモーター駆動時間(リレー ON時間)が長い場合は,約20秒を経過すると自動的にリレーをOFFします。
        2. 強制学習作動(挟み込み防止機構キャンセル操作)
          1. 万一,挟み込み防止機構の異常によりドアガラスが閉じきれない(全閉位置で停止しない)トラブルが発生した場合,オートアップ操作を約10秒以上続けることにより,強制的に位置情報が“学習”できていない状態に移行させることができます。この後,ドアガラスを全閉することにより,位置情報の修正を行うことができます。
関連資料
従来の記載内容は,パワーウインドゥシステムー構造と作動 参照